2010/02/03

マイレージ・マイライフ/ Up in the Air

『リストラ宣告代理』という仕事をもつ主人公ライアンは一年の殆どを飛行機とホテルの中で過ごし自宅に帰るのは年に僅か40日余り。彼は結婚というものを信じておらず独身貴族をつらぬいてきた。そんな彼が旅先のホテルのバーで知り合った女性アレックスにだんだん恋に落ちていくというラブ・ストーリーのように見える映画だけど。。。

その背景には、この歴史的経済不況のなか『解雇宣言』という任務を会社側は避けて、代理人を雇うという、冷酷で非人道的な日常がまかり通るという現実が描かれています。
主人公を演じるジョージ・クルーニーは内容のある脚本を選ぶ事で知られています。この前に見た彼が出ている作品は『マイケル・クレイトン(邦題フィクサー)』で、環境問題と大企業の裏工作をテーマにしたもの。彼がアカデミー賞を獲得した『シリアナ』ではアメリカやアラブ諸国の石油利権のための陰謀を暴く強烈なテーマをあつかい、しかもこの映画では彼が総合プロデューサーだった。

この『マイレージ・マイライフ』もそのコミカルなタッチの裏側には、何十年も努めて来た人たちを解雇する仕事というシニカルなテーマがあります。
主人公は恋愛や結婚を信じない「人間嫌い」で、しかも仕事は「リストラ宣告」という、刺客人のようなもの。そして生き甲斐は『マイレージの数字』。。。という最悪なキャラクターです。
そんな彼の仕事も、新人のアシスタント、ナタリが提案するネットとビデオを使って解雇宣言をするという「新しく無駄のない」方法に取って代わろうとするのですが、彼はそれに対して強く抵抗します。それは彼が「飛行機に乗らなくなりマイレージの数字がたまらないからだ」と思われるのですが。。。
一方、彼はその「職を失う」という人生の悲劇を『代理』といえどもせめて直接口で伝えるという方法を信じている。いくつかあるシーン* でよく伝わってきますが、監督はそこに、根底にある彼なりの『ヒューマニズム』を描こうとしたのかもしれない。。。
「ゴミのように捨てられた」人たちの声が反映されていて、実際ににそういう経験がある人たちも映像にでてきます。
笑って、泣けて、考えさせられるいい映画でした。
やはりジョルジュ・クルーニーは美しくてインテリジェントな男だ。
世の女性みんなが好きになるのも解ります。。。(笑)
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*(少しだけネタばれかも。。。)
大量解雇がこれからも続くアメリカでは彼の仕事は続けられざるを得ないですが、「ビデオでの解雇宣言」という冷酷な方法を提案してきたナタリーは結局この仕事を続けるにはあまりにも感受性の多すぎる人物だとわかり、彼は彼女のために新しい仕事の推薦の手紙を書くという優しい行為を垣間見ることができます。 また人間嫌いで「愛」や「結婚」というものを全く信じていない彼が、式の当日におじけづく義弟を慰めたり、まずしくて新婚旅行に行けない妹夫婦のためにアメリカ各地で記念写真を撮ったりするという「妹思い」な優しい一面が描かれています。

2 件のコメント:

  1. 今日本のドラマもこのような背景のものとっても多いです。
    今NHKはちょうどリストラ業のドラマやってますね。

    今日ちょうど本屋さんでこの本、置いてあったのみました。
    最初、ただ単に飛行機のマイレージの話かと思っちゃって(笑)
    買えばよかった!

    ジョージ・クルーニー実は元々そんなに興味がなかったのですが
    何かの宣伝でTVで話をしているとき、他愛のない話をしている
    姿がものすごくかっこ良くて、あの目に吸い込まれてしまいすっかりファンになってしまいました。

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  2. >>mamiko さんへ。

    ホント、まさにこんなご時世ならではのドラマですね。

    『ゴールド』や『ブラック』というマイレージやクレジットの「特典カード」がステータスを表すと現代社会を痛快に皮肉っていました。

    クルーニーが自分の制作会社で作った映画はどれもとても質の高かったし。彼の大スターとしてのポジションを有効に利用して、いい作品に出演してる素晴らしい俳優だと思います。

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