2011/10/20

木から落ちる少年 / Jeff Wall

Boy Falling from Tree, 2010 - © Jeff Wall 
オステンデ三日目の午前中は、朝一番に出て高速を東へ1時間程飛ばしてブリュッセルまで行ってきました。今回のベルギーの旅の目的のひとつだったんですが近代美術館BOZARでやってたカナダ人のアーチスト、ジェフ・ウォールの大きな展覧会を観てきました。彼の新作『木から落ちる少年』です。



この作品は彼が実際に子供の頃に体験した思い出をもとに作られたそうです。これまでの彼の作品の殆どは、彼トレードマークともいえる広告のように大きなライトボックスにポジフィルムで作られていますが、今回この作品では珍しくジェエト・プリンターでした。ポジフィルムだとコントラストが強くなりがちでそれが彼の作品の特徴でもあるんですが、このプリントは木の陰の柔らかい緑の調子が綺麗でした。。。
Morning Cleaning, 1999, Jeff Wall
会場を入ると最初にこのライトボックスの作品がありました。朝掃除の風景ですがこの建物は20世紀の最も代表的建築物の一つであるバルセロナにあるミース・ファン・デル・ローのが造った空間で撮ったものです。これも彼が昔実際に出くわしたシーンのなのかどうかは知りません。まあこの作品ができあがるまでのプロセスはアーチストのみぞ知る事ですから。。。でも画面を二分割する柱や黒い絨毯、など構造的且つ抽象的な形がまず目にはいります。そして最後にしゃがみ込んだ掃除夫が見えてきます。この作品を目の前にした時に何故かこの春にウルビーノでみたピエロの『キリストの鞭打ちの刑』を思い出しました。真ん中にある柱もそうですが、肝心のアクションがどちらも画面の奥にあるからなのか。。。

彼は写真を使って表現するアーチストですが、僕は彼は根本は画家だとおもいます。絵画を意識した作品も幾つかあります。
A Sudden Gust Of Wind, 1993, Jeff Wall
この突風を撮った作品も実は日本の偉大な画家北斎へのオマージュ。インスピレーションは
北斎の木版画『富嶽三十六景』からとったものです。この風のイメージを再現するのに映画撮影ようの大扇風機を使って何度も撮り直したそうです。一枚の作品に映画並みのスタッフを使っています。凄いです。。。
今回の展示はジェフ・ウォール自身が関与しており、時代順に飾られいるのですが面白かったのは6部屋に別れていて、その時代毎に彼が多かれすくなかれ影響受けた絵画や写真や映画が展示されていました。その中で文学から直接影響を受けた作品群もあり、彼が好きな小説の一シーンの文章も出ていて、それまで少し難解だった幾つかの作品もその「成る程、そうだったのか。。。」と思わされました。
Spring Snow, 2000 - 2005, Jeff Wall
中でも印象に残ったのはこの作品で、三島由紀夫の『春の雪』の一シーンをイメージし創られたものです。これは何年か前にパリの美術館で観た事があったんですが、その時はこれまでの作品とは随分ちがうなぁって思ってました。この小説の一シーンを描くというは彼は昔からやっていたという事が今回の展示で解り納得しました。そういえば昔観たとき、洋装なのに「日本の女性みたいな。。。」って一瞬感じたのをよく憶えています。
その時は僕の深層心理の中では日本の女性像を求めてるからなのかなぁって勝手に自分のリアクションを分析してました。(笑)
でもこれって彼が三島の描く明治の女性のをイメージしたものだったのだから、僕が見てどこかに日本を感じるのはむしろ当然ですよね。この背中が綺麗です。。。

2 件のコメント:

  1. おもしろいですね!
    やっぱり春の雪が迫り来るなあ。

    全体的な陰影と、衣装と小物の繊細さにため息です。

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  2. >>Joe さんへ。
    「春の雪」はジェフ・ウォールの作品では珍しいと思います。
    以前は他と作風が違うから気になったのかなと思ったのですが
    これは、やはり日本人女性の背中だからなんでしょうね。。。

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