ヴェローナ郊外にあるボンヴィッチーニ工房はブロンズの鋳造工房ではイタリアではもっとも大きな工房です。その倉庫にこの大きなホアン・ミロの石膏像があるんですがミロが実際に手をかけたオリジナルです。ここの女社長のジョヴァンナさんが言うには、この像は40年も前からここにあるのですが、来年これを壊さなければならないそうです。
その理由というのは、遺族の弁護士がこれ以上作品を作ると、今世界にある幾つかのブロンズの像の価値が下がってしまうからという事らしいです。ジョヴァンナはスペインにあるミロ美術館とか、或はミロ財団に寄付したらいいと進めたらしいのですが、アメリカの弁護士の「壊すべき」という意見に従ったそうです。
ブロンズ像つまり複製の価値を落とさないためにオリジナルであるこの石膏の彫像を壊す。何かおかしいですよね。お金の世界では『芸術作品』の概念が別になるようですね。。。
ヴェローナに行くたびに食事の話しかしてしないんで、美味しいものを食べに行ってるだけじゃないかと言われそうなんで、少しだけ仕事の話です。(笑)
今回ジョヴァンナの仲介で兄弟で作業しているある小さな金工房で仕事したのですが、金を流し込む作業は見た事がなかったのでとても貴重な体験ができました。
1kgの純金の延棒です。こんな大きいの初めて手にしたジョヴァンナさんは耳飾りにしようかしらと、はしゃいでました。(笑)
プレス機で延棒をのばすと見る見るうちにベルトのように長くなっていきました。1ミリ以下に延ばすことができるそうです。そう金箔もこういう具合に延ばしていくんですよね。
24金の純金は柔らかすぎて細工ができないので、銀と銅を混ぜて22金にする作業です。小さく四角に切った純金とこの合金である銀色の小粒と一緒に1000度以上の温度で混ぜて溶かします。(金は1gで3700円位だから1kg超えてるんで大変な値段です。。。)
それをいったん水の中に注いで冷やすと雫が固まったような金のかたまりができます。これが「22金」です。
そしてこれを再び溶かして今度は彫像の雌型がある円柱状の石膏型に流し込みます。
冷えたらこれを水の中で石膏型を溶かすと綺麗な形をした金の彫像が中から出てきます。
残念ながらその彫像はお見せできませんが、翌日綺麗に洗浄した彫像は見事でした!こんな体験は後にも先にも一度きりなのでとっても嬉しかったです。ここは兄弟でしている小さな工房ですが、主にミラノにある超高級宝石店などに卸す作品をつくってるそうです。
何だか、ヨーロッパ中世からある「錬金術師」の伝統を垣間見たようなきがしました。
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