2011/06/09

 ピナとアリス

4月に封切りされた、ヴィム・ヴェンダース監督の最新作『Pina』。一昨年他界した舞踏家ピナ・バウシュが振り付けしたダンスを撮影したものです。忙しくてなかなか行く機会をもてず、もう上映されてないかな~っと思いながら調べたら、パリではまだ結構上映されてるところがありました。ドキュメンタリー映画は通常そんなに長くは上映されないのがですが、さすがヴェンダースです。。。


彼は20年来の友ピナ・バウシュが亡くなった後はこの映画をつくる気力をなくしてしまったのをヴッパンタール舞踏団のダンサーたちの支援で仕上げる事ができたそうです。

ヴェンダースにこのドキュメンタリーを作る決心をさせたのは実用化されだした3Dカメラだったそうです。彼が撮ろうとしていたピナ・バウシュの世界を表現するのにまさしく理想的なカメラだったそうです。
3D効果を狙った映画って見てると目眩がしてきて僕はあまり好きではないのですが、正直この映画も最初はちょっと心配だったのですが、それも杞憂だったようで ヴェンダースの3Dの使い方は媚びたところもなく良かったです。彼のエゴは極力おさえてピナ・バウシュの世界が全面に出されています。
彼女の拠点であるヴッペンタールの街には吊り下がり式モノレールが走ってます。その車両とダンサーとの絡みが面白く撮られています。車両の中でのパフォーマンスには笑ってしまいました。


このモノレールの3D効果を狙ったものと思われがちだけど、実はヴェンダースは既にこのモノレールをの作品に撮り込んでます。『白黒3部作』といわれる彼の初期の作品『都会のアリス』の中で主人公と不思議な少女アリスとの珍道中の際にこのヴッペンタールの街に辿り着きます。


『アリス』は彼の作品群のなかでも僕の最も好きなものの一つです。根本的にアンデパンダンな作家であるヴェンダースは、テレビに支配された現代の映画産業ではあまり思うように作品を撮れなかったようです。その反面『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』のようなドキュメンタリー作品に彼の力量が発揮されているような気がします。
この映画を観てピナ・バウシュの世界に感激したと同時に「ヴェンダースが帰ってきた。。。」という、ちょっと嬉しい感じでした。

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