画家モンドリアンのパイプと眼鏡。ハンガリー出身の写真家アンドレ・ケルテースの作品です。白いテーブルの角が画面の淵に突き当たり左右に力強く造形的な黒い三角形を造り出しています。はじめてこの作品をみた時、フランスの17世紀の静物画を見てるような感動を受けたのを憶えています。
コンコルド広場にあるジュ・ド・ポーム美術館でケルテースの展覧会を見てきました。母国ハンガリーで写真家として活動しはじめたあと彼は1920年代にパリにやってきます。
『ダダ』や『シュールレアリスム』のアーチスト達とも親交を持ちました。そして1927年にバルナック・ライカを購入し、彼がプロとして最初にライカを使った写真家だったそうです。
彼の名声はアメリカにも知れ渡り1932年にはニューヨークのギャラリーで大きな個展を開いてます。
1936年には仕事で妻エリザベットと一緒にニューヨークに渡るのですが、戦争勃発のためそのまま残ることになり、後にアメリカ国籍を獲得し永住することになります。そのためかフランスの写真家カルチエ・ブレッソンたちと並ぶ巨匠であるにもかかわらず、フランスの国立美術館ではじめての回顧展です。パリのマレー地区にあるアガタ・ガイヤール・ギャラリーで何度も彼の展覧会は見てきたのですが公共の場でははじめてだったのですね。まぁ保守的なフランスの美術館で『写真』が市民権を獲得するのに時間がかかったし。お役人キュレターは、まずはフランスの巨匠からという意識があったのか暗黙の内に彼の公的展覧会は後回しにされてた感じがします。かといって不況が続く『現代美術市場』では比較的値段が安い『写真』がこの10年来大ブームですが、その世界ではケルテースなんて遠い過去の人で見向きもしないってかんじです。
死後25年。それにしてもおそ過ぎます。。。
妻エリザベットの目と肩にかける彼の手。大好きな作品のひとつです。実はこの展覧会でこの作品になるまでのプロセスが展示されていてとても興味深かったです。というのはこの作品の原画はこの写真でした。
ここから一度トリミングした写真が当時雑誌に載った事もあるようですが、最後はあの大胆な『目と手』という構図にいたってます。『写真はトリミングするものではない』という人たちもいますが、その辺の論争は専門家に任せておきましょう。この回顧展ではケルテースの斬新で自由な創造力にあらためて感心させられました。
歪んだ鏡に映るヌードとセルフ・ポートレート。
隣のバルコニーの影。僕にとって本当に「目からウロコがとれる」ような写真を彼は沢山とっています。また来てみたいと思ういい展覧会でした。。。
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