2011/11/11

椅子のはなし。。。(2)


倉俣史朗氏の「ガラスの椅子」です。70年代中頃、当時出たばかりのフォトボンド(光反応で固まる接着剤)を使って三保谷硝子が制作したもの。僕は既に渡仏してましたが氏のこの作品をデザイン雑誌(確か『idea』だったと思う)で初めて見て鳥肌がたったのをよく憶えています。この椅子を見てると図面に描かれたデッサンの線の緊張感がそのまま伝わってきます。洗練されたカタチを提案し続けた倉俣史朗の作品の中でも、僕にとって最も印象に残った一つです。




六本木にあるギャラリー『夢のカタチ』でに面白い家具の企画展の招待状を頂きました。おそらく「東京デザイナーズウィーク」に合わせたイベントだと思います。 残念ながら僕は始まる前に帰仏したんで見れませんでした。
展示されているのは「カーボンファイバー」を使ったテーブルと椅子です。制作は株式会社イシマルで、デザインは同社の鈴木清巳氏によるもの。去年同じ時期に同じ材料を使った椅子のプロトタイプ『ゼフィ』が発表されましたが、今回はその椅子の完成品と、あと新しくつくられた照明付きのテーブル『クローリス』が展示されます。
(写真は『AXIS』154号より転載させて頂きました)
去年発表された椅子のプロトタイプはカーボンファイバーの素材を生かし,何と806gとかいう重さだったのですが、一年かけて強度テストにも絶えるよう手直して、商品として完成させたとしても900gは軽く切っているようです。これって人差し指一本で持ち上がる重さですね。。。カーボンファイバーの素材は早くからF1のレースカー等には使われていましたが、これだけの規模で家具製作に起用するのは珍しいと思います。
制作したイシマルは倉俣史朗氏の家具やインテリアを手がけてきた事で有名です。そして氏の最晩年の椅子ミス・ブランチもイシマルが制作しています。

この椅子は1988年にパリのギャラリーで発表された時に見ました。アクリルの中に浮ぶ美しい真紅のバラが何とも儚い世界を映し出しています。「ガラスの椅子」にしてもこの「ミス・ブランチ」にしても最高の職人技を駆使しての作品です。素材の可能性と詩情(ポエジー)を究極まで追究した事が見てるだけで伝わってきます。
そして、ギャラリー『夢のカタチ』が三保谷硝子ビルの隣りにあるのも偶然ではないみたいです。。。
もの造りに専念する姿勢は素晴らしい。

是非ご覧あれ。

『Khloris / クローリス』
11月1日ー11月15日 12時〜19時


ギャリー「夢のカタチ」
東京都港区西麻布1−8−4
tel : 03−3408−1256


2 件のコメント:

  1. ガラスの椅子、本当に緊張感ありますね。
    すごい。

    素材の進化とかエコロジーとか、いろんな時代背景があるのがおもしろいですよね。
    パントンチェアも今はポリプロポレンですしね。
    ポリプロピレンも、卵の殻みたいでおもしろい質感ではあるんですよね・・・

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  2. >>Joe さんへ。
    この椅子にはホントにショックを受けました。
    そして最晩年のミス・ブランチも透明です。
    両方の椅子に座ったことがありますが
    何かお尻をみられているみたいな感じで恥ずかしい気がしました。(笑
    倉俣氏は生前にデザインと環境問題を考慮し、
    チタンなどを使うことを模索していたそうです。。。

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