2010/03/21

万葉翡翠


『松本清張生誕100年記念』とかで、最近彼の作品が何本もドラマ化されていますね。大好きな作家なんで、Youtubeや類似サイトでついついクリックして見てしまうんですが、いつもがっかりする事が多いです。。。
前宣伝のため期待していた『点と線』も原作とはほど遠いものでした。『テレビ』という枠内でアイドルやタレントを使うテレビドラマの限界なんでしょうね。昔、映画では野村芳太郎監督の作品等には素晴らしいものがありましたけどね〜。最近は映画も完全にテレビの延長だし、なかなか難しいものがあるんでしょうね。『ゼロの焦点』も予告を見る限りでは期待できなさそう。。。
という事でちょくちょく原作にもどる自分です。
清張氏の短編に『万葉翡翠』(まんようひすい)という題名の小説があるんですが、数多い彼の短編の中でも大好きで何度も読み返す作品の一つです。

考古学専攻の男子学生三人が、彼らの先生八木助教授の示唆する「万葉の歌に出てくる『淳名川(ヌナガワ)の底なる玉』つまり不老不死の力を持つといわれる「翡翠」が中国やビルマから輸入されたモノではなく、国産のものであろう」という斬新すぎる仮設を実証するために、夏休み中にその幻の翡翠を捜しに出かける話です。 
彼らの目指す土地は古代でいう「高志の国」で現在の新潟と長野にまたがる地域。三人の友人はそれぞれ手分けして探しに出かけます。一週間後に各自の探索を報告するために待ち合わせた東京のカフェにあつまったのですが。ただ一人「今岡三郎」だけ約束の時間に現れなかった。。。彼は「沼河比売」(ぬなかわひめ)の伝説がある糸魚川市付近の、姫川の上流の小滝川渓谷まで足を運ぶと言ったまま消えてしまった。次第に大騒ぎになり捜索隊をかり出してさがしたが全くの手がかりを見つけられず一年間が過ぎてしまう。そして残された恋人多美子は彼の死を覚悟するようになる。。。だがそんなある日彼女が購読している短歌雑誌に掲載された或る女性の短歌に目を惹かれる。それは姫川地方には絶対にあるはずのない「フジアザミ」が咲いている光景の美しさをうたったもの。しばらくして彼女はこの短歌の裏に、消えた婚約者今岡の謎がかくれていると確信する。。。
この作品には糸魚川付近の地図ものっているのですが、中で地図を広げながらの会話が多いんで、ほんの数ページで読者をあっという間に越後の山奥にある姫川の渓谷に連れて行ってくれます。
さしづめ今ならグーグル・マップかな。しかもグーグル・アースだとパリからひとっ飛びです!

現在では古代の翡翠は糸魚川産だというのが常識だそうです。韓国の遺跡から出てくる翡翠もこの糸魚川のものだという事で、輸入されたのではなく、むしろ輸出されていたんですね。。。
話中には八木助教授の新説は学会の「お偉い先生達」には認めらることのない悔しさも反映されているわけですが、これは松本清張氏が独学で「邪馬台国の歴史」を勉強したものの、権威ある学会は彼の意見に見向きもしなかったという彼自身の境遇を描いているのかなぁっていう気も思います。


ってなわけで、のめり込んでは相変わらず地下鉄の駅乗り過ごしてます。。。


===



2 件のコメント:

  1. なんと!!!
    これは知りませんでした。
    早速明日書店に走らねばならないではないですか!!(笑)
    きっと親戚も誰も知らないでしょう(笑)
    回し読みしなければ。
    そして先日お見舞いにいった叔母の名前もタミコです(驚)
    小滝はうちの祖母(ひいばば)の実家があるのですが子供の頃2回くらいしか
    行った事なくてあまりそういう楽しさがわかっていない頃だったので
    今となっては残念でした。
    ものすごい山奥で空気と水が美味しくて家の中では
    ハエ取り紙が上からたれててハエがいっぱい捕まってた・・・という思い出しか今はありません(苦笑)

    返信削除
  2. >>mamiko さんへ。
    さっそく読んでください! 
    『駅路』という題名の短編集にはいってるのを持ってるのですが、
    これには傑作が結構入ってます。
    それにしても「タミコさん」とは驚き!!!

    そう、水が本当に綺麗で野生のわさびがはえてる。。。
    って書いてありましたね。僕はついつい、
    幼少時代に住んだ大野の山奥を想像しながら読んでしまいます。。。

    返信削除