パリ市のシアター『THEATRE DE LA VILLE』で『Shunkin』というお芝居を見てきました。この劇場でアルバイトをしている若い友達が招待券をくれたんで久しぶりに演劇鑑賞してきました。谷崎潤一郎の短編小説『春琴抄』を戯曲化したもので、演出はイギリス人サイモン・マクバーニー氏です。彼は一昨年パリ郊外のナンテール市にあるアマンディエ劇場で数学者を主人公にした作品を彼率いる劇団「コンプリシテ」と発表し話題になりました。
今回は「世田谷パブリックシアター」の日本人の役者さんたちによる日本語での演技だということで、果たして人が集まるんだろうかなと思ったのですが、なんの会場は満席でした。
そして芝居はとてもよかったです。マクバーニー氏は『春琴抄』に加えて谷崎の『陰翳礼讃』の文章も所々に引用していて。舞台空間もその深い「闇」を演出したものでした。9歳で失明した琴(春琴)に従順に仕える丁稚の佐助の二人が主役。といっても琴は二人の黒子に操られる人形で演じられていました。その人形が成長し次第に黒子の女性が乗り移り最終的には彼女が琴を演ずるのですが、その変貌ぶりが面白かったです。前半は黒子のまま人形の幼い声を演じていたのが、歳が重なるにつれて次第に身体ごと前面に出て来るんです。
ピーター・ブルックの作品には欠かせられない笈田ヨシ氏をはじめ、「世田谷パブリックシアター」の役者さんたちの素晴らしい演技に感心しました。勿論それ以前に演出家がいるわけですが。。。
あとでパンフレットを見たら黒子は深津絵里さんが演じていました。この女優さんはネットでみれる昔の刑事物のテレビドラマでしか見た事ありませんでした。今のテレビドラマ演出では俳優の技量はあまりわかりませんが、でも最近見た小川洋子の小説『博士の愛した数式』が映画化された作品で寺尾聡の相手役として彼女の存在感が印象に残ってました。
この『Shunkin』は演出もとてもよかったですが、それと同時に深津絵里さんのテレビでは見る事のできない演技が光っていました。
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