2010/01/25

映画日和り。。。


その昔、1892年にパリで、エミール・レノーが「テアトル・オプティック」という劇を観客の前で公演しました。彼が発明した「プラキシノスコープ」という幻灯機を使ってのアニメーションのようなスペクタクルに、パリジャンは皆こぞって足を運びました。
実はちょうど今、パリの国立映画美術館シネマテックで「幻灯機、絵で描かれた映画史400年」という展覧会があって観て来ました。そしてこの展覧会の目玉はこの「テアトル・オプティック」の再現です。つまり実際に当時の機械を使って当時の手描きのフィルムをコピーして、そのスペクタクルを118年ぶりに上演したのを見る事ができました。すごく面白かったです。っていうか感激しました。当時パリジャン達はこの手品のような「イリュージョン」に皆魅了されました。勿論、観客はスクリーンの反対側でその投影された動く絵だけを見るわけですが、今現在、興味が惹かれるのは、その裏側の素晴らしい「からくり装置」です。でもこの「光るパントマイム」と呼ばれたレノーの催し物は、数年後にリュミエール兄弟が発明した『シネマトグラフ(映画)』の公演がはじまると同時に一挙に廃れてしまいました。
そしてパリジャンたちは初めて映画のなかで蒸気機満車汽車が観客に向かって飛び出してくる映像をみて大騒ぎをしたそうです。



でっ、『アバター』やっと見れました! 
映画美術館シネマテックを出てすぐ前にある歩道橋でセーヌ河を歩いて渡ったところに500人以上収容できるパリ市内では結構大きい映画館で見て来ました。週末でしたが12時開演だったのでまだ人は少なく、いい場所でみれました。3Dメガネをつけて見る映画は久しぶりでした。最初は画面がちょっと暗く感じましたが、しばらくして眼がなれてきたら気になりませんでした。そして舞台となる壮大な風景や深い森の『3D効果』はすごい迫力でした~。ちょいと子供の頃に戻った気になりました。
そしてストーリーの内容は周囲の人からの話を聞いてあまり期待していなかったのですが、ナンのナンの、結構見応えがありました。まあロボットとか戦闘機総出演でビデオゲームで育った世代を意識した映画であることは間違いないのですが、これまでのアメリカ映画のような単純な『勧善懲悪』のパターンではないのに好感をもちました。いつか「ジブリ」の高畑勳監督がパリで講演した際に観客のある質問の答えに「アメリカ映画とは違い、『もののけ姫』では善と悪がはっきりしていない」と言うような事を語っていたのを思いだしました。『アバター』を見て、この映画がその昔アメリカ大陸からインディアン族を、そしてオーストラリ大陸からはアボリジニ先住民族を撤去した白人への強烈な批判である事が解ります。そしてキャメロン監督はあるインタビューに答えて、ブッシュ政権が『予防戦争』とい名目でイラク戦争の勃発させたアメリカへの強烈な批判であることは隠さないと語っています。確かに映画の中で大勢の軍隊の前でクオリッチ大佐が『予防戦争しかない!』と叫んでいるシーンがありました。僕は一瞬「おっ!」っと思ったくらいです。「対テロ戦争」とかいう理由でアラブ諸国の石油確保のための「侵略戦争」の何物でもなかったイラク戦争をこれほどのインパクトをもって批判するこの作品は賞賛すべきものがあると思う。。。そして特に生物多様性(Biodiversity)の必要性を詠い、それを破壊してきた人類へのメッセージでもあると思います。見た人たちの多くが「内容は今ひとつだけど3Dは凄い」と言ってますが、僕はこの作品の形式以上に内容も見るに値するものだと思いました。
そして手塚治虫の『ジャングル大帝』がディズニーの『ライオンキング』の原型になったり、『もののけ姫』がキャメロン監督に影響を与えたことを考えると、「日本映画もまだすてたもんじゃないなぁ〜」っと、ちょいと嬉しい気もします。
いづれにしろ『アバター』おすすめです! 

3Dメガネという「からくり装置」を使ってみるこの映画は、120年前にエミール・レノーが「テアトル・オプティック」の、今では稚拙ともいえるアニメーションが当時のパリジャンに夢を与えてくれたように、そしてリュミエール兄弟の観客に向かう汽車に驚愕したように、「劇場で見る映画芸術」の原点を思い出させてくれるものかも知れない。。。

2 件のコメント:

  1. おケイ@研究室2010年1月27日 0:57

    アバター面白いですよね。
    見終わった後はなんだか現実と映画の境が分かるけど分からないような
    不思議な感覚になって、空飛ぶカラスを見ては勝手な妄想を膨らましていました(笑)。 

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  2. >>おケイさんへ。
    そう、思ってた以上に内容がよかったんで面白かったです。
    ちょっと退いてしまうようなバイオレンスな場面もあったけど、
    でも考えると現実ではもっと過激で残酷なシーンに出くわす事もありますよね。。。
    カラスが!(笑) 
    確かにああいう風に動物と感情が通じ合えれば素晴らしいですよね。

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