2010/01/30

バナナフィッシュに最適な日

サリンジャーが死んだ。91歳で。
彼は20才頃から短編小説を発表するようになったけど、23才の時に志願して軍隊に入り、その2年後の1944年の『ノルマンディー上陸作戦』での激戦に参加しており、そのあと解放されたナチスのユダヤ人強制収容所に、最初に足を踏み入れた米軍兵士の一人だったそうです。その後彼は、相次いだ激戦や目の当たりに見た「強制収容所」の悲惨さが『トラウマ』となり精神障害におちいり、一時入院する事になり、そして軍隊を去ります。。。
不思議な事に彼が死んだ1月27日は、最大規模だった『アウシュヴィッツ強制収容所』が1945年に解放された『記念日』でした。
僕の頭の中では、は「小説の中に出てくる小説家」のような小説家でした。
何故かというと、その生きざまがちょいと神秘的で。。。

サリンジャーは『ライ麦畑でつかまえて』のあと2、3冊の本を書いた後は、社会から全く離れた生活を送っており、インタヴューなどにも一切答えなかったそうで、ついに本も書かなくなってしまったそうです。でも噂では彼は毎日のように書く作業をしていたそうです。
『先生、先生』と呼ばれていろんなメディアに露出する作家が多い中で、彼の孤立した生きざまは神話化されていました。彼が書く文のスタイルが後の『ビート・ジェネレーション』の作家たちに及ぼした影響は大きいいそうです。僕は短編『バナナフィッシュに最適な日』の文章に度肝を抜かれました! その文のスピードについていけず、何度も読み直した憶えがあります。ほんの数ページの作品だけど、こんなにインパクトがあった小説は少ないです。世界中からの賞賛にもかかわらず、彼は公の前に顔を出す事はありませんでした。彼は自分の作品が映画化されるのも固く拒んでました。

最近、映画『エレファント』で一躍有名になったガス・ヴァン・サント監督の10年程前の作品に『小説家をみつけたら』というのがあり、僕は結構好きなんですが、この中に大好きなション・コネリーが演ずるところの作家像は、サリンジャーをモデルにしてるそうです。

==== 

3年前に村上春樹氏が『ライ麦畑でつかまえて』を新訳し、僕も早速買いました。そして本の最後のページにこんな文章が印刷されています。。。
本書には訳者の解説が加えられる予定でしたが、現著者の要請により、また契約の条項にもとづき、それが不可能になりました。残念ですが、ご理解いただければ幸甚です。(訳者)』
でも僕は思うんですが、おそらくサリンジャーはこの二行の文章も拒んだのでないだろうかと。作家にとって『読者』と一番近い処にいるには、作品そのものであるべきです。



0 件のコメント:

コメントを投稿